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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

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サービス経営

​人材育成

サービスの人材育成は、若手の育成も大切ですが、むしろサービス事業をつくっているベテラン人材やマネジメント人材が、サービスの本質を捉えた事業運営ができるよう、育成を加速することが欠かせません。

 サービスの人材育成は、OJTという言葉を都合よく解釈して「経験を積みなさい」「背中を見て学びなさい」と、現場や個人の経験やセンスに頼り切っていることが多々あります。また、サービスに関する研修は、“新人向け”というレッテルが貼られており、中堅やマネジメント層がサービスの本質を理解する機会がないままに、自己流でサービス事業を推進していることが少なくありません。

 

 サービス競争が激化する中で、本質を捉えてサービスをマネジメントできるかどうかが、事業の成長を左右するようになってきました。サービスのマネジメントや今後の経営の中核を担うサービス経営人材の育成を加速する必要性が高まっているのです。

 

サービス人材育成の方向性

 「うちの現場は、サービスマインドが低くて困っています」という相談を受けることがあります。その背景を探ると、現場よりも、サービスのマネジメントの方向性に問題があることがよくあります。“失点撲滅型マネジメント“で、「いかに失点をなくすか」ばかりに重点が置かれているのです。

 

 例えば、失敗事例が組織内に共有され、クレームやミスに対して徹底的な指導や管理が行われて、失点しない社員が評価されています。このようなマネジメントの方向性の中では、サービスマインドを発揮して顧客からの評価を高める取り組みは”報われない努力“となることが多く、現場はサービスマインドを発揮する場や気持ちを失っていきます。やがて社員は働きがいを見失って疲弊し、働き盛りの中堅社員が離職していくといった具合に、サービス事業は負のスパイラルに陥る恐れすらあります。

 

 サービスの価値を高めて事業成長をドライブするのであれば、サービスマネジメントの方向性を“失点撲滅型”から“得点評価型”にステージアップさせる必要があるのです。そのためには、サービス経営人材が、得点型でサービス事業を成長させるためのシナリオと、それを実現するための勘所を、サービスの本質と共に理解していなければならないのです。

 

 従来、サービスの人材育成は、業務知識やマナー、クレーム対応の研修といった具合に、若手向けに失点をなくすための教育やトレーニングが中心でした。しかし最近では、中堅やマネジャー向けに、得点を増やしたり、得点型マネジメントを実現するための人材育成に積極的に取り組む企業が増えています。サービス経営人材育成を加速するためには、まずは人材育成体系の中で、「若手向けから、マネジメント向けまで」、「失点と得点」のバランスを見直す必要がありそうです。

変化の時代にサービスマネジメントも悩んでいる

 

サービス事業の推進者も悩んでいます。

・高い業績目標を意識するあまり、「いかに売りつけるか」という観点で押し付けの施策を打ち出してしまう。

・顧客のクレームや苦情の対応にばかり気が取られて、失点撲滅型のマネジメントから抜け出せない。

・現場の忙しさに振り回されて、本質的な取り組みに着手できない。

・流行モノのキーワードやツールに飛びついて、次から次に検討が立ち上がっては消えていき、何も積みあがっていない。

  など。

 

 サービス事業の問題は実に複雑に絡み合っています。その中で、何から手を付けたら良いか分からなくて闇雲に取り組んでしまったり、直観や経験則だけに頼って事業をマネジメントしてしまいます。あるいは、本質的な取り組みであるにもかかわらず、本当の成果が出るまで待ちきれずに途中で挫折してしまう、もったいないケースもあります。

 

 これからは先が読めない変化が起こる時代だと言われています。時代とともに“顧客”も変化します。この変化の時代を乗り切るためには、管理としてのサービスマネジメントでは力不足です。時代や顧客の変化に合わせて、(あるいは変化をけん引するために、)サービスを自己革新する力が求められているのです。時代の変化を成長のチャンスにできるのか、危機に陥ってしまうのか、いままさに分岐点を迎えつつあります。

 

 

“壁”でパワーアップするサービス経営人材の育成

 

 サービスの自己革新を、現場任せにしていたり、経営者の掛け声に頼っていては、サービス事業に変化を生むことはできません。経営から現場までが一体となった組織的なサービス改革の推進者として、サービス経営人材のパワーアップが欠かせないのです。

 

 サービス事業を改革するには、6つの壁(建前の壁、情熱の壁、顧客不在の壁、闇雲の壁、実行の壁、継続の壁)を乗り越える力が必要です。これらの壁を乗り越える力を養うことは、事業の成長力や競争力そのものを高めます。

 

 そのためにまずは、目に見えない“サービス”の本質を理解する必要があります。これまで触れてきたように、サービスは顧客と一緒につくるものであること。打ち手を考える以上に、価値ある事前期待の的を捉えることが極めて重要であること。リピートや紹介に繋がる満足は大満足のみで、やや満足の97%は離反の可能性が高いこと、など。サービスの考え方を体系的に理解し直すことは、サービス事業の推進に欠かせません。

 

 加えて、ビジョンと危機感と使命感を組織に醸成して改革への原動力を高めること。事業成長のシナリオを描くこと。価値あるサービスをつくりとどけるためのサービスプロセスを組み直すこと。価値あるサービスを体現できる人材や組織を育成すること。得点型マネジメントで成果実感を高め、積み上げ型でサービスを磨くこと。これらを通して、取り組みを時間とともにスパイラルアップさせていくのです。

 

 いま、産、学、官の様々な領域で連携して、サービス経営人材育成の熱心な取り組みが始まっています。頭でっかちな人材育成ではなく、サービスビジネスの現場で力が発揮でき、サービス事業の構成要素である「顧客」、「従業員」、「事業」のどれも犠牲にしない事業成長を推進することができるかどうかが、サービス経営人材の腕の見せ所となりそうです。

 

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