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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

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科学を活かす

​サービス経営

勘と経験のサービス経営から卒業する時期にある企業は多い。サービスの本質を捉えた「心×科学」のサービス経営で自分たちらしい事業への進化を加速したいものです。

一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生に、前著「日本の優れたサービス」の帯にメッセージをいただきました。そこにこんな言葉があります。

 

―サービスはアート&サイエンスである―

 

私もサービス改革の専門家として「心×科学」を大切にしています。「CS向上を科学する」と題した当連載も、心ある科学、心に火のつく科学でありたいと思っています。サービス産業の生産性向上に注目が集まる昨今、サービスの領域に様々な「科学」や「テクノロジー」が登場しています。サービス事業において科学やテクノロジーをどう活かすべきなのでしょうか。これから先のサービス経営を考えるこの時期に、科学について考えてみたいと思います。

サービスは「心」ではダメなのか

 

サービスはお客様と一緒につくるものであるという特徴があります。そこには直観や共感性の発揮が欠かせません。経験値やセンスを高めることも大切です。つまりサービスは、アートや心の要素が極めて重要なビジネスであると言えます。これまでサービス事業の多くはこの「アート」や「心」で運営されてきました。

 

しかしこれから先の厳しい競争環境の中で、このスタイルでは勝ち抜いていくことは困難です。経験やセンス、個人的な価値観に頼り切った「まぐれ当たりのサービス経営」から脱却しなければならないのです。これは簡単なことではありません。当連載でも取り上げましたが、サービス改革には6つの壁が存在します。顧客不在の壁、建前の壁、闇雲の壁、実行の壁、継続の壁、情熱の壁。これらは、経験やセンス、精神論や根性論に頼ったサービス経営では乗り越えられない壁でもあります。

サービス経営に科学を活かす

 

そこで、サービス経営に「科学」を活かすことで、壁を乗り越えるサービス改革にチャレンジする企業が増えています。これまで磨いてきた感性や経験知といったアートや心に、「科学」を掛け合わせることで、現場の知恵や工夫を組織の力に変えて、自分たちらしくサービスの価値を格段に高めたり、事業の成長力や競争力を高めるのです。これは、自分たちらしさの詰まった価値ある“まぐれ当たり”を「まぐれ」のまま放っておくのではなく、今度は狙って当てられるようなサービス事業への成長を意味します。他社のマネではなく、これまでと全く違う何かに飛び込むこととも違う、自分たちがこれまで積み上げてきた思いと経験知を、サービスの魅力に変える「事業のステージアップ」だといえます。

それは自分たちらしい科学なのかを問う

 

ここで大切なのは、「科学」や「テクノロジー」だけでは使い物にならないことです。いくら正しい理論でキレイな絵を描いたり、巧妙なビジネスモデルを組み立てて、先進のテクノロジーを導入しても、事業や現場の心(アート)が活きなければ意味がありません。サービスは、現場でお客様と一緒につくるものだからです。現場の心やアートを引き出し、高め、存分に活かすための「科学」であるべきです。

 

特にテクノロジーの導入には、サービス設計が必要です。自分たちのサービスの価値を高め、最大限に発揮するためのサービス設計がなければ、どこにどのようにテクノロジーを活かすべきか分からないはずです。しかし実態は、サービス設計がないまま、闇雲にテクノロジーを導入しているケースが散見されます。科学やテクノロジーが活かせないだけでなく、サービスの価値や魅力を削いでしまうことすらあるのです。

現場がピンとくるかにこだわる

 

経験やセンスに頼り切ったサービス経営から卒業すべきときにある事業はたくさんあります。だからこそ、「サービスはアート&サイエンス」であり、「心×科学」なのです。「心に頼り切ったまぐれ当たり」からは脱却しなければなりませんが、「頭でっかちで心ない科学」「サービスの価値や魅力を削ぐテクノロジー」ではダメ。

 

これまで積み重ねてきた経験知や思い、“らしさ”が活きる形で、事業のステージアップをしたいものです。そのカギは、サービス経営をもっと科学することです。そしてその科学は、経営だけでなく、サービスをお客様と一緒につくる「現場」がピンとくるものであるべきです。これまで培ってきた経験と思いからくる直観で、現場がピンとくる科学であれば、その事業にとって有効である可能性は高いのではないでしょうか。「心×科学」「アート&サイエンス」で、自分たちらしい事業のステージアップの在り方を考えてみていただけたら幸いです。

 

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