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SERVICE  SCIENTIST’S  JOURNAL  

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共創とは

​顧客との”協働”が全て共創といえるわけではありません。価値を共創するとはいったいどういうことなのか、適応と共創の違いも踏まえて、理解したいものです。

 「共創」の本質を捉えているか?

 ビジネスやサービスの世界で「共創」という言葉がよく使われるようになっています。“共創“は顧客と協働することだと、顧客接点を強化したり、顧客との協働範囲を拡大したりと、顧客と一緒になった取り組みに熱心な企業が増えています。これ自体は大変素晴らしいことだと思います。
 しかしその定義が曖昧なまま、顧客との協働を何でもかんでも「価値共創」と呼んでしまっている企業は少なくありません。そして、その多くが「共創」ではなく「適応」というべきものです。


そもそもサービスの価値は何によって決まるのか

 協働を通して顧客のニーズや事前期待に応える。これは、「価値共創」ではなく「適応」というべきものです。

価値共創とは言葉の通り、顧客と一緒になって価値を創造することを指します。“価値を創造する”とはどういうことなのかを理解するには、サービスの価値は何によって決まるのかを理解しなければなりません。それはサービスの定義が示す通り、そのサービスが応える「事前期待」で決まります。

詳しくは「サービスの定義」を参照

 たとえば日本サービス大賞の受賞事例では、通常の料理キットのお届けサービスは「手間なく料理したい」という事前期待に応えるサービスが多いのに対して、オイシックスのプレミアム時短献立キットは「料理の手抜きに対する罪悪感を感じたくない」という事前期待に応えることで、付加価値サービスを実現していました。家づくりでは、「間違いのないハイスペックな家を手に入れたい」という事前期待に応える住宅会社が多いのに対して、フォレストコーポレーションの工房信州の家は「家づくりのプロセスを家族づくりの経験にしたい」という事前期待に応えることで、圧倒的な差別化をしています。一般的な路線バスは地域内の「送客」の事前期待に応えることを使命としているのに対して、埼玉県で路線バスを運行するイーグルバスは、地域の外から利用者を集める「創客」の事前期待に応える路線バスサービスを展開することで、地域における路線バスの使命を革新しています。

このように、サービスの価値は、どのような事前期待に応えるのかによって、ガラリと変わるのです。これを「事前期待の的」と呼び、サービスの付加価値向上やサービス改革の目標地点としています。


“価値共創”と“適応”の明確な違いとは

 

 話を戻すと、“価値を創造する”とはつまり、“事前期待を創造する”ということなのです。よって、「価値共創」は、顧客との協働を通して、事前期待の創出や喚起、成長や強化といった形で、事前期待を進化させることが欠かせません。顧客との協働によって事前期待が進化すれば、それに応えることで、サービスの価値も進化します。これが、「価値共創」の定義というわけです。

 一方で「適応」は、顧客との協働はしているとしても、顧客の要望やニーズに応えているのであり、事前期待そのものは進化しません。正確に言えば、事前期待を進化させることを目指していなかったり、意識していません。結局、同じ事前期待に延々と応えるだけで、サービスの価値が進化しないため、“価値を創造している”とは言い難い状況です。


“価値共創”を事業に実装する

 

 こうして「価値共創」と「適応」の違いを明確にしてみると、「ドキッとしました。うちは顧客と協働しているものの、“適応”にしかなっていませんでした。」と、気づきを得て頂ける企業が多くあります。「価値共創」の本質を捉え直して、事前期待の進化を促すような価値共創活動をテコ入れし、時間を味方につけてサービスの付加価値をどんどん積み上げることで事業の成長力や競争力を強化する。スローガンとしての「共創」から、事業に実装する「共創」へと、ステージアップしていきたいものです。

 

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