SERVICE SCIENTIST’S JOURNAL
顧客を
事前期待で
再定義
顧客をプロフィール情報で定義していないでしょうか。事前期待で再定義すると、経営から現場までがピンとくるサービス改革の基軸ができます。
顧客の定義に事前期待を組み込む
サービスの本質を捉えたサービス設計の基軸は、事前期待の的のモデル化です。事前期待の的の設定次第で、サービスの価値はガラリと変わります。
価値ある事前期待を見つけたからと、スローガンに掲げるだけでは意味がありません。これをサービスモデルとして、顧客の定義に組み込むのです。「どんな事前期待の顧客がメインターゲットなのか」を定義します。
顧客の定義に現場はピンときていない
多くの企業では「顧客の定義」は、さまざまな顧客を十把一絡げにして「お客様」の一言で済ませています。あるいは、「30代独身女性」や「ビジネスパーソン」、「大手製造業の既存顧客」といった具合に、顧客をプロフィール情報で定義しています。これでは、サービスの現場はピンときません。「30代独身女性の事前期待」といってもその事前期待は人により様々だからです。
だからこそ、「事前期待」で顧客を再定義すると、具体的に明日からどんな努力をすべきか、誰でもピンときます。サービスは顧客と一緒につくるものなので、顧客接点の現場にいるスタッフが努力のポイントにピンとこなければ、サービスを変革することはできません。
事前期待で顧客を再定義すると・・・
たとえば、保険の相談窓口のサービスにおいて、「自分で納得して決めたい」という事前期待の顧客には、スタッフができるだけ丁寧な説明とこまめなQ&Aを繰り返すことで、とことん理解して納得していただく必要があります。
一方で、「考えるのが面倒なのでお勧めしてほしい」という事前期待の顧客に対して同じように丁寧な説明を始めると、「やっぱり面倒くさい」と思われて二度と相談に来ていただけなくなります。
このように、顧客の事前期待のちがいによって、対応の仕方を180度変えなければならないことはすぐにわかります。
自社のターゲット顧客を事前期待で再定義してみよう
保険会社の事例のように、顧客によって事前期待は異なります。そして、どちらも大切な事前期待であることが少なくありません。そこで、サービス改革を進めるために、縦軸、横軸、斜め軸の3本で事前期待の分類軸を設定し、顧客の事前期待をタイプ分けし、その中でメインターゲットを設定します。
まずは自分たちのサービス事業における事前期待の分類軸をいくつも挙げてみると良いでしょう。いくつも事前期待が挙がったら、価値ある事前期待はどれなのかを、徹底的に議論して見出していきます。
事前期待の議論から生まれる気付き
ある企業では、顧客の事前期待をあまり挙げることができませんでした。今までの努力が「顧客のため」ではなく、いかに商品やサービスを買わせるかという、提供者都合の押し付けになっていたことに気づきました。ここから、全社的なサービス改革が進み始めました。
他にも、事前期待で顧客を定義したところ、今までの努力では、やればやるほど去ってしまう顧客がいることが明らかになりました。そこで、事前期待に合わせて応対方法を4タイプに分けることで、短期間に顧客満足向上とサービス受注を劇的に高めることに成功しました。
このように、事前期待を中心にサービスを組み立て直すことは、業界の常識や提供者目線にとらわれていた意識の改革にもつながり、サービス事業のステージアップへの大きな一歩になるのです。
※サービスの本質を科学する理論や手法を事例やワークも交えて理解したいという方は、是非セミナーもご活用ください。